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はせくらじけん

支倉事件

甲賀 三郎

「読売新聞」1927(昭和2)年1月15日~6月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 204,697 字 · 406 页

青空文庫

大そううなされていましたぜ。玄関で大分呼んだのですけれども、返事がないので上って来たのですが」

浅田はニヤ/\しながら云った。

「いろ/\思い案じているうちに昼間の疲れでつい転た寝をしたと見えます。そして恐ろしい夢を見たものですから」

居ずまいを直した静子は襟元にゾク/\と寒気を催しながら答えた。この程から一方ならぬ世話になっている浅田に対しては、断りなく居間まで這入って来た無礼をむげに咎める事が出来ないのだった。

「そうでしたか」

浅田はうなずきながら、

「此頃のように気を使っては尤もな事ですよ。そう云えば支倉さんもいよ/\公判に廻るそうですね」

「はい、近々そう云う都合になるそうです」

「予審で免訴と云う訳に行きませんでしたかなあ」

「はい、矢張り有罪と極りました。それに」

静子は恨めしそうに浅田を見上げながら、

「保険会社から私訴とやらが出まして、この家を仮差押えされて終いました」

「えっ、仮差押え?」

浅田は驚駭の色を現わしながら、

「そ、そんな筈はありませんが」

「でも、いたし方ございません。一昨日すっかり差押えられて終いました」

「はてね」

浅田はじっと天井の隅を睨み上げながら、