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はせくらじけん
支倉事件
甲賀 三郎
「読売新聞」1927(昭和2)年1月15日~6月26日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 204,697 字 · 406 页
勢い大島司法主任は署長に逐一報告しなければならなかった。
「怪しからん奴だ」
話のすむのをもじ/\して待っていた署長は年の割に毛の薄い頭から湯気でも立てるように赫っとして、早口の北陸訛りで怒鳴った。
「そんなやつを抛っとくちゅうやつがあるもんか、関わん、署員総がゝりで逮捕するんだ」
署長と云うのは、つい一週間程前に堀留署から転任した人だった。前任地では管内の博徒を顫え上らした人で、真っすぐな竹を割ったような気性の人で、よく物の分る半面には中々譲らない所があり、場合によると非常に熱狂的な快男児だった。庄司利喜太郎と云えば無論知っている人がある筈だ。後に警視庁の重要な位置を占めた人である。不祥な事件に責を負って潔く誰一人惜しまないもののないうちに、警察界を引退した人だが、当時は大学を出て五、六年の三十二三歳の血気盛りで、こうと思えば貫かぬ事のない時代だった。
「そう云う奴は君」
暫くして庄司署長は云った。
「きっと前にも悪い事をしているに違いない。少し身許を洗って見たらどうだ」
「私もやって見ようと思っていた所でした」
署長の慧眼を称えるように司法主任は答えた。