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はせくらじけん

支倉事件

甲賀 三郎

「読売新聞」1927(昭和2)年1月15日~6月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 204,697 字 · 406 页

青空文庫

火事に遭った事は偶然だろうか。偶然でないとは云えないけれども、三度が三度ながら火事に遭って、いつでも少からぬ保険金を受取っているのは偶然以上ではなかろうか。尚調べた所によると彼は収入以上の贅沢な暮しをしている。それに現在の大きな家も彼の所有であるし、外に家作を持っている。聖書を盗んだ高も中々の額に上っているようだが、その外に何かの手段で金を得なければあれだけの財産は出来ない。尤も財産を作るには利殖の方法もあるし、比えば定期市場に手を出すような方法もあるから、一概には云えないが、三度の火事は疑えば疑えない事はない。彼の今までのやり方を見れば保険金詐取の放火である事が殆ど確実ではないか。

石子が火鉢の前で考えに沈んでいると、表戸がガラリと開いた。

「郵便かしら」

表戸がガラリと開いたので、妻のきみ子はぞっとしたようにそう云って立上った。

「郵便じゃなかったわ」

やがて晴々した顔で彼女が這入って来た。後には岸本青年がニコ/\しながら従っていた。

石子は彼の姿を見ると、機嫌よく言葉をかけた。

「やあ、よく来たね」

「大へん御無沙汰いたしました」

岸本はすゝめられた座蒲団を敷きながら、