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はせくらじけん
支倉事件
甲賀 三郎
「読売新聞」1927(昭和2)年1月15日~6月26日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 204,697 字 · 406 页
最後の土壇場に来ても尚、跳起きて隙もあらば反噬しようとする彼の執念には只々舌を巻くの他はない。
あゝ、在獄七年余、朝に夕に呪い続けて、いかなる手段を尽しても死刑を逃れ、一度浮世に出でんと努力し続けた忍苦執拗、支倉の如き人間が又と世にあろうか。
因藤裁判長は支倉の忌避の申請を受取ると、直ちに会議を開き合議の上左の決定書を与えた。
決定
被告人 支倉 喜平
右の者に対する窃盗放火詐欺強姦致傷及殺人被告事件につき、右被告人より裁判長判事因藤実に対し、偏頗の裁判を為す虞れありとして、忌避の申立を為したるも、右申立は訴訟の遅延せしむる目的のみを以て、為したる事明白なるを以て、刑事訴訟法第二十九条第一項に依り、決定する事左の如し。
主文
本件忌避の申立は之を却下す。
大正十三年六月二十日
裁判長以下署名捺印
決定書は直に市ヶ谷刑務所在監支倉喜平の許に送達された。支倉はこの送達書を受取って、如何なる行動に出るであろうか。
大団円
支倉が最後の手段として試みた忌避の申立は見事に却下されて、即日その決定書が送達されたが、支倉は果してどう云う態度に出たであろうか。