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はせくらじけん
支倉事件
甲賀 三郎
「読売新聞」1927(昭和2)年1月15日~6月26日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 204,697 字 · 406 页
お篠はジロリと岸本を見ながら、
「確な訳じゃないが死んだろうと思うのさ。それは支倉さんの女中なんだよ」
「あゝ、女中さんですか」
「それがね、三年前に行方不明になって終ったのよ」
「へえ!」
「未だに分らないらしいが、まあ死んだんだろうね」
「そうですね、三年も行方が分らないとすると、死んだのかも知れませんね、どうして行方不明になったんですか」
「それがね、そんな小娘だけれども、油断がならないね、支倉の旦那が手を出したらしいんだよ。男ってみんなそう云う者さ。それがもとで一旦宿へ下げられたんだがね、まあそんな事で子供ながらも世の中が嫌になり家出したんだろうさ」
「可哀そうですね」
「可哀そうだと思うかね」
「思いますね」
「ふん、口先ばかりだろう。男なんてものはそんな事を平気で仕でかして置いて、直ぐケロリと忘れて終うんだから」
「そんな事はありませんよ。おかみさん」
「そう、岸本さんはそんな事はないかも知れないね」
「それで何ですか、おかみさん」
岸本はお篠の言葉をはぐらかしながら、
「支倉さんはどこに居るか分らないのですか」
「分らないの。尤も主人は知ってるかも知れない。手紙のやり取りなどして、いろ/\頼まれるらしいから」