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しなまいのふくろ

支那米の袋

夢野 久作

「新青年」1929(昭和4)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,357 字 · 50 页

青空文庫

……その穴からヤングが先に脱け出して、あとから這い出した私を抱え卸してくれたの。

それは浦塩附近に初めて雪の降った晩で、あの屋根の白い斑雪もその時に積んだまんまなのよ。風は無かったようだけど星がギラギラしていてね……その横路地に白い舞踏服姿の妾が、寝台から取って来た白い毛布にくるまってガタガタに寒くなりながら立っていると、ヤングは大急ぎで、向家の横路地の間から、隠しておいた支那米の袋を持って来て妾の頭の上からスポリと冠せてくれたの。そうしてそのまんま地びたの上にソッと寝かして、足の処をシッカリとハンカチで結えるとヤットコサと荷ぎ上げながら、低い声でこんな事を云って聞かせたのよ。

「さあ……ワーニャさんいいですか。暫くの間辛いでしょうけども辛棒して下さい。私がもう宜しいって云うまでは、決して口を利いたり声を立てたりしてはいけませんよ」

ってね……。だけど妾は、その袋があんまり小さくて窮屈なのでビックリしちゃったわ。妾の身体は随分小さいんだけど、それでも足を出来るだけグッと縮めなければ袋の口が結ばらないのですもの。おまけにその臭かったこと……停車場のはばかりみたいな臭いがしてね。