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しなまいのふくろ

支那米の袋

夢野 久作

「新青年」1929(昭和4)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,357 字 · 50 页

青空文庫

だけど第一の階段を昇ってしまうと間もなく、一番先に立って、妾の足を抱えていた男が、変な声でヒョックリと唸り出したの。そうして何を云うのかと思っていると、

「ウーム。ウメエもんだナア。ヤングの畜生、あの手で引っかけやがるんだナア。どこへ行っても……」

って、サモサモ感心したように云うの。そうすると妾の腰を担いでいた男も真似をするように唸り出したの。

「ウーム。まるで催眠術だな。一ペンで温順しくしちまやがった」

そうすると又、妾の頭を担いでいた男が、老人みたような咳をゴホンゴホンとしながら、こんな事を云ったの。

「十七人の娘の中で、ワーニャさんだけだんべ……天国へ行けるのはナア」

「アーメンか……ハハハハハ」

こんな事を云っているうちに、又二つばかりの階段を昇ると、ザーザーという波の音がして甲板へ出たらしく、袋の外から冷たい風がスースーと這入って来て、擦り剥けた臂の処が急にピリピリ痛み出したの。それと一緒に明るい太陽の光りが袋の目からキラキラとさし込んで来て、眼が眩むくらいマブシクなったので、妾は両手で顔をシッカリと押えていたようよ。そうしたら足を抱えていた男が、