轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ほうしんきょうじゅ
放心教授
森 於菟
「屍室斷想」時潮社、1935(昭和10)年3月9日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,647 字 · 10 页
そして受け取った銀貨や銅貨を蟇口の中にザラザラしまい込むとやっと用がすんだという気分になってそのまま店を出てゆくのである。驚くのは店の子僧やおかみさんで水菓子の袋や絵本の包み、時によっては煮豆佃煮の類の竹の皮入れを持って私のあとを追いかける。先にいった権利と義務のうち、無意識に私を強く支配するものが義務の方らしいのでたいがいは買ったものを忘れるが稀に義務の方を忘れ、金を払ったつもりで包みだけぶらさげて出そうになることがある。この時は万引きみたいではなはだきまりの悪いおもいをするが私の態度が明らかに間が抜けているとみえて警官を煩わすほどの事件を惹き起したことは幸いにまだ一度もない。
学生の時徴兵猶予願いを忘れて、これはお上のことに属するので何とも始末のつけようがなく、よんどころなく一般壮丁とならんで褌を一着に及び検査をうけたことはいつか書いたことがあった。結婚式の日には教室で実験していて時間を忘れていた。宅から猛烈な催促の電話をうけて忙てて帰って礼服を着て大神宮にまかり出た。その時の記念写真を見るとフロックコートはつけているがカラーは平日のダブルのままであった。