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ほうろう
放浪
織田 作之助
「文學界 第七年第五号」文藝春秋、1940(昭和15)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,614 字 · 47 页
死んだ文吉のことなど一寸立ち話した後、浜子は、短気を出したら損やし、丸亀へ戻って出世して六貫村へ錦を飾って帰らんとあかんしと意見した。順平はそうや、そうやと思うと、急に泣いたろという気持がこみ上げて来てぼろ/\と涙をこぼし、義姉やん、出世しまっせ、今の暮しから足を洗うて真面目にやりまっさと言わなくても良いことまで言っていると、無性に興奮して来て拳をかため、体を震わせ、うつ向いていた顔をきっとあげると、汚い川水がかすんだ眼にうつった。浜子が小走りに病院の方へ去って了うと、どこからかオイチョカブの北田が現れて来て、高峰お前なか/\味をやるやないか、泣きたんがあない巧いこと行くて相当なわるやぞと賞めてくれたが、順平はそんなものかなアと思った。その金は直ぐ博打に負けて取られてしまった。
ある日、美津子が近々聟を迎えるという噂を聴いた。翌日、それとなく近所へ容子を探りに行くと本当らしかった。その足で阪大病院へ行った。泣きたんで行けという北田の忠告をまつまでもなく、意見されると、存分に涙が出た。五円貰った。その内一円八十銭で銘酒一本買って、お祝、高峰順平と書いて丸亀へ届けさせ、残りの金を張ると、阿呆に目が出ると愛相をつかされる程になった。