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ほうろう
放浪
織田 作之助
「文學界 第七年第五号」文藝春秋、1940(昭和15)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,399 字 · 47 页
のことに気がつくと、悲壮な表情を装いながら学校へ駆けつけ、地震怖かったやろ、そういって美津子の手を握ってたら、何んや、阿呆らしい、地震みたいなもん、ちっとも怖いことあーらへんわ、そして握られた手はそのままだったが。奇体な順ちゃん、すけべいと云われて、随分情けなかったなどとは、さすがに云わなかった。
女学生の袴が水の上にぽっかりひらいて……という木下の話は順平の大人を眼覚ました。弁護士の試験をうけるために早稲田の講義録をとっているという木下は、道で年頃の女に会うときまって尻振りダンスをやった。順平も尻を振って見せ、げらげら笑い、そしてあたりを見廻すのだった。
ある時、気がついてみると、ふらふらと女中部屋の前にたたずんでいた。あくる日、千日前で「海女の実演」という見世物小屋にはいり、海女の白い足や晒を巻いた胸のふくらみをじっと見つめていた。そして又、ちがった日には「ろくろ首」の疲れたような女の顔にうっとりとなっていた。十六になっていた。二皮目だから今に女泣かせの良い男になると木下に無責任な賞め方をされて、もう女学生になっていた美津子の鏡台からレートクリームを盗み出し顔や手につけた。