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せいじとさっかのげんじつ
政治と作家の現実
宮本 百合子
「文学」1947(昭和22)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,700 字 · 37 页
そこでその手が血に染んでいないことだけはたしかな永井荷風の作品、谷崎潤一郎の作品などが、当時の営利雑誌に氾濫し、ある意味で今日デカダンティズム流行の素地をつくった。そして、戦争の永い年月、人間らしい自主的な判断による生きかたや、趣味の独立を奪われていた一般読者は、無判断に、ほとんど封建的な「有名への」屈伏癖でそれを読み、うけ入れた。これははっきり自分たちの運命の民主化をおくらすことなのであったが――。
ソヴェト市民は一九一七年以来文盲撲滅を努力的に行って、もとはインド、中国と並んでいた文盲のロシア人民を、啓発してきた。本を読む人口は全人口の尨大な部分をしめている。これはシーモノフなどの文学作品の発行部数が数百万部というのでも想像される。これらの新しい読者階級は、もとのようにすでに読むことにすれている有識階級の範囲にとどまっていない。男女の農民・兵士・工場の労働者・学生・教師・政治活動家・芸術家、広範囲にひとしくよまれる。したがってその理解の段階も複雑であることが思われる。
民衆精神のうちにはいつも鋭い諷刺の精神がある。日本の徳川末期、町人階級はそれを川柳・落首その他だじゃれに表現した。