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せいじとさっかのげんじつ

政治と作家の現実

宮本 百合子

「文学」1947(昭和22)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,700 字 · 37 页

青空文庫

「スクタレフスキー教授」の作者の心理主義の傾向に、こういう外国文学との近似性が感じられるにせよ、ソヴェト社会は、その構成と運行の基本をフロイド風の「無意識」の決定権にゆだねているのではないのだから、作品もリアリティーにおいて分裂し失敗している。リベディンスキーの作品「英雄」が一九三〇年前後のソヴェト大衆から逃げ場のない批判をうけたのも、彼が新しいおもちゃとしかけた心理分析の興味とそれによる失敗のせいであった。

シーモノフは若い強壮な肉体と精神をもち、人生をたのしむ力も学ぶ力も大きい作家だと思われる。日本へ来て、モスクワへ帰ってすぐアメリカへ行った。シーモノフのような作家がアメリカの社会生活を経験するということは非常に有益である。彼自身のために、またソヴェト社会とその文学のために。なぜならば、日本に来ても、ユーゴスラビアへ行っても、彼には彼の手帳をとり落すほど気を奪われる何ものもなかった。彼の自若性、客観性はテストにかからなかった。それらの国々での社会生活は、彼のもちあわせた判断力を惑乱させるほど豊饒でないから。アメリカでシーモノフは、一個のソヴェト市民とし、一個の社会主義作家として、これまでのどこにおいても経験しなかったいくつかの経験にめぐりあわないわけにゆかない。