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せいじにかんするずいそう

政治に関する随想

伊丹 万作

「キネマ旬報 再建第三号」1946(昭和21)年6月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,515 字 · 11 页

青空文庫

そんな事実がどこにあつたか。

なるほど国民の一部には選挙権が与えられ、有権者は衆議院議員を選挙することができた。しかし、国の政治はそれらの議員が行うのではない。政治は選挙とはまつたく関係のない政府の閣僚によつて行われる。そしてこれらの閣僚を決定するのは内閣の首班と軍人であり、内閣の首班を決定するものは、軍人と重臣であつた。このようにしてできあがつた政府は、その立法権を行使して国民の意志や利益とはまつたく相反した悪法を、次から次へ無造作に制定して行く。行政機関であるすべての官庁はただ悪法を忠実に履行して国民の幸福を奪い去ることだけをその任務としている。そして、この間にあつて国民の代表であるはずの議員たちは何をするのかというと、一定期間、その白痴的大ドームの下に参集して、もつぱら支配階級の利益を擁護するための悪法の制定に賛成し拍手を送る。それだけである。

政治をしない議員を選出するための選挙が国民の義務であり得るはずはない。いわんや、このようなむだな投票を棄権したからといつて、私は毫もおのれの良心に恥ずるところはない。むしろ、日本国民中の有権者の全部が、なぜいつせいに棄権して、あのような欺瞞政治に対する不信を表明し得なかつたかと残念に思うくらいである。