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こきょうをおもう
故郷を想う
金 史良
「知性」1941(昭和16)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,586 字 · 5 页
書いて送ったのだ。私は悲しみに打ち沈んでいる老母を、そんな仕事からでも気をまぎらわせたかったからである。それで妹の返事を見て重ねて手紙を出したところ、つい五六日前の手紙には母が着々用意を整え、トマトの方もあきれる程までに沢山註文したし方々から花種も取寄せているということだった。その上この文を草している今日は又奇しくも母が愈々掘り返しをはじめましたと云って来た。それがどれ位の出来栄えか、今度帰ったら殊更私も仰々しくそれをほめそやさねばなるまいと考えたりする。
とはいうものの故郷に帰りたいという思いは、ひとえに母や姉や妹、それから親族の人々に会いたいという気持からだけではない。やはり私は自分を育んでくれた朝鮮が一等好きであり、そして憂欝そうでありながら仲々にユーモラスで心のびやかな朝鮮の人達が好きでたまらないのだ。東京でいつもせせこましい窮屈な思いで暮している私は、故郷に帰れば人が変わったように困る程冗談を云う。友達にはむろん先輩にさえ、気がどうかしていると思われる位に実のない冗談を持ちかける。もともと人一倍そういったところが好きで、深刻そうに真面目ぶるのが苦手の性分でもあるが。