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こきょうをおもう
故郷を想う
金 史良
「知性」1941(昭和16)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,586 字 · 5 页
だから帰れば家でも毎日を冗談と笑い話で暮しているようなものである。そういえば又思い出すが死んだ姉などは殊に私とは調子が合って、何事にも声を出して笑い、笑ってはついに腰が折れるまでに笑いこけたものだ。だが時々急にこの地で致し方ない程の郷愁にかられると、大概は神田の朝鮮食堂にでも行って元気な学生達の顔を嬉しそうに眺めたり、朝鮮歌謡の夕だとか野談や踊りの催しなどをさがしては出掛ける。それも今は少くなったが。――そこで移住同胞達の笑顔を見たりはしゃぐ声を聞いたりすると、時には思わず微笑ましくなり、又涙ぐましくも悦に入ったりするのだ。あの朝鮮語のふざけた弥次を聞くのが又大好きと来ている。思わず吹き出してしまう。これはどうにか一種のセンチメンタリズムと云えたものかも知れない。
朝鮮の空は世界のどこにもないと云われる程、青くからりと澄んでいる。早くその下を歩きたいと此頃思い出したので、どうにもしようがなくなって来た。こうして私はいつも朝鮮と内地の間を渡鳥のように行ったり来たりすることになろう。何しろ母も年が年なので、あの澄み渡った青空の下、どこか好きな大同江の流れでも見下ろされる丘の上に住みたいものと心では考えている。