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ぶんかせいさんしゃとしてのじかく
文化生産者としての自覚
宮本 百合子
「評論」1947(昭和22)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,920 字 · 10 页
ちょうど、みかんは主食にならないけれど、みかんのヴィタミンは、身体にいいと知っていたように。ところが、こんにち谷崎、荷風のものなら「闇屋が買うから」といわれていることには、おのずからちがった意味がある。
作家が自分の本をいつ、誰に、何処で読まれるかということについては、これまできわめて受動的な立場にいた。読みたい人は誰でも読み、そしてまた誰でも読むということがその作家の社会的な商売的な存在のひろさをはかることでもあった。だから谷崎、荷風が闇屋に読まれるということもその作家にとやかくいうべきでない社会現象であるともいえる。なぜなら、闇屋は最近の日本の破滅的な生産と経済と官僚主義の間から生えたきのこであり、谷崎、荷風はそんなきのこの生える前からそこに立っていた資本主義社会の発生物であったのだから。
しかし作家の生きてゆく社会的感覚と作品の生きてゆき方――作品の普及される方向、出版されてゆく条件などについて、単に受動的でいられなくなっている作家、著述家があらわれてきている。
一九四五年八月、戦争が終って、日本に民主的方向が示された。言論の自由・出版の自由がとりもどされた。