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ぶんかせいさんしゃとしてのじかく
文化生産者としての自覚
宮本 百合子
「評論」1947(昭和22)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,920 字 · 10 页
それぞれの生産部門の特殊性というものは、意味ふかい自省を求めていると思う。出版・印刷の全組合員が、悪出版に抵抗して、組織ある発言をするとき、闇出版屋の横暴が何の痛痒も感じないということはあり得ない。出版・印刷関係の勤労者は、もっともっと自分の仕事の社会性を知ってほしいと思う。目さきのケースを越して、そこにつながる自分たちの人生のねうちとして、活字を見てほしいと思う。その一字一字が、自分の声のかたまった形として感じてほしいと思う。
これまで、文筆家・作家たちは、自分たちの文筆活動について、稚い幻想をもって来た。文筆活動は、肉体の勤労よりも人間的に高級ででもあるかのように思いこまされて来ている。しかし、それが非現実であるのは、夏目漱石の遺族がどんなに印税をとったにしろ、岩波書店ほど金もちにならなかった一事をみてもわかる。現代の殆ど全部の文筆家・作家は出版企業のために、その利潤を得るために働いている。原稿料・印税で賃銀をしはらわれ、「先生」という呼びかたで、一種の立場にくぎづけされている。著作家組合が出来たとき、文筆家は、自分のところで、自分の道具で、自分の時間で執筆するのだから、外の勤労と条件がちがうと考えた人があった。