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ぶんかさい

文化祭

坂口 安吾

「小説新潮 第八巻第九号」1954(昭和29)年6月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,978 字 · 28 页

青空文庫

「卑劣です。私はアナタを訴えます。その弁解は法廷でなさい」

法廷という言葉に五助は脳天から足の爪先まで感電してすくみあがってしまった。顔色を失って、一分、二分、三分。一寸一分、一寸二分、一寸三分とうなだれる。重役の風格どこへやら、全然ダラシがない。

信二は五助の代りにタバコに火をつけて、三四服、静かにくゆらした。

「どうも、無責任な話ですね。これが、農村なんですね。万事に責任がもてないのです。土の中に芋がいくつついたか責任がもてませんし、麦が穂に幾粒つくか責任がもてません。その芋だのネギだの人参が百姓の親友なんですから、彼らは芋同然、あるいは芋虫の同類に当るわけです。先天的に無責任です。芋が文化祭をやったのが、そもそも失敗でありまして、ひいては大学生の皆様にまで御迷惑をおかけするようになったわけですが、かえりみれば本日の聴衆も芋でした。損害賠償ということは敗戦国の重大な課題でありますが、都会にバクダンが落ちますと損害を生じるに反しまして、農村にバクダンが落ちますと、ただ穴ができます。これを平にならしますと元にもどってバクダンの破片がプラスになって永久に残ります。