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ぶんだんむかしばなし

文壇昔ばなし

谷崎 潤一郎

「コウロン」1959(昭和34)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,802 字 · 20 页

青空文庫

私はしかし、当時スランプに陥っていて、我ながら自分の書くものが気に入らなかったので、樗陰の手紙にもそう腹は立てなかった。で、「事実このところ巧く書けないで困っている、君の言にも一理はあると思う」というような返事を出した覚えがある。

○

喧嘩を売るといえば、大正五年に、生田長江が『新小説』の誌上に「自然主義前派の跳梁」という題で、白樺派――というよりは、主として武者小路実篤氏を目がけて凄じい攻撃の矢を放ったのは、頗る威勢のいいものだったので、忽ち文壇にセンセーションを捲き起した。「ここに武者小路実篤という人がある。私はこの人の書いた物を、ほんの少しばかりしか読んでいないが、その事のために私の非難されねばならない理由は、一もないということを確信して置いてから私の議論を進めよう。」と、いったような調子で、

いわゆる白樺派のもっている悪いところとは何であるか。精一杯手短かな言葉に代表さしていえば、「お目出度き人」という小説か脚本かを書いた武者小路氏のごとく、皮肉でも反語でもなく、勿論何らの漫罵でもなく、思切って「オメデタイ」ことである。

再びことわって置く。