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ぶんだんむかしばなし
文壇昔ばなし
谷崎 潤一郎
「コウロン」1959(昭和34)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,802 字 · 20 页
私は右の「お目出度き人」という小説だか脚本だかをまだ読んでいない。そしてまだ読んでいないのをちっとも悪い事だと思っていない。加之、あの小説だか脚本だかを読んでいないでも、武者小路氏及び氏によって代表されているいわゆる白樺派の文芸及び思潮が、本当にオメデタイものであることを言明し得られると思っている。
と、徹頭徹尾こんな書きぶりで、約二十枚ぐらいの長さにわたって書き続けているのだが、煎じ詰めれば上に引用したような言葉に尽きる。つまり相手に腹を立てさせるのを目的にして漫罵を連ねているのである。「あんなスキマだらけな乱暴な書き方をしないでも、もう少し書きようがあったではありませんか」と、或る時私が長江にいうと、「いや、議論を吹ッかける場合には、わざとスキマを拵えて置く方がいいんです、そうしないと敵が乗って来ないんです」といっていたが、なるほど評論家にはそういう心得が必要なのかなと、感心したことがあった。若き日の武者君も黙っていない方だったからなかなか辛辣に応酬し、長江が「僕をからかうのは、五、六年おくれて僕の落し穴におっこったようなものだ」とか、長江を「ゼロ頭」