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ぶんがくとちほうせい
文学と地方性
宮本 百合子
「文芸」1940(昭和15)年7月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,647 字 · 11 页
思わせる。描けないものとしてわきまえる常識とその常識の故に間崎のエロティシズムも、「痴人の愛」の芸術的陶酔として白光灼々とまでは燃焼しきらないものとなっていることもわかる。
この一篇の長篇の終りは、遁走の曲で結ばれている。さまざまに向きをかえ周囲を描いていじって来た江波から、作者はついに常識人である間崎とともに橋本先生につかまって逃げ去っているのであるが、ともかくあれだけの小説のボリュームを、作者が、主人公を東京へ逃がすことでしめくくっているのを、非常に面白く思った。小説としてはそれで何にもしめくくりになっていないわけだのに、困った作者は、一応間崎を橋本先生と東京へ落してやって、一息をついている。作者が、何か遠い地方住居の日常で東京へ行ってしまった間崎の後姿を感じている感じかたを、面白く思った。自分の愛する若者もとうとう東京へ行ってしまった。そのことで境遇の絶対の変化を自分に云いきかす地方の娘の心理と通じるものが全くそこにないと云えるだろうか。
フランスの作家が途方にくれると、よく主人公をアルジェリーへ旅立たせてしまう。東京暮しの作家は同様の場合、とかく軽井沢だとかアルプスだとかを思い浮べるらしい。