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ぶんがくとせいかつ

文学と生活

宮本 百合子

「入門文学講座 第三巻」新日本文学会、1950(昭和25)年3月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 17,476 字 · 34 页

青空文庫

われわれは、自分としてしんから書きたいものを、どのように書いてゆくかということに課題の中心をおきかえて努力して行く方が、具体的に文学をのばしてゆく方法だと思う。

その人としていま、どうしても書かずにいられないと感じられているものを、いま、自分に見えているところから書いてゆきながら、てっとりばやくそれを作品にまとめようと、せき立たないことである。それよりも、むしろ書いてゆけばゆくほどかくれていたいろいろの複雑な関係がわかって来て、その関係を自分で満足するまで描き出そうとする、とまた新しくそこにわからないところも、つかめていないところも出て来る。思いがけないところで先がつまって、そとでのひと勉強――場合によっては全く文学の枠のそとで研究、経済だの組合問題だのの勉強が必要になってくるかもしれない。しかしそれは、新しい小説を創造してゆこうとするこんにちの人々にとっては、むしろ当然ではあるまいか。生活と文学の明日そのものが、その人の歴史に新しい明日であり、日本の歴史そのもののうちに新しい人民の明日としてまだ誰にも経験され、書かれていないのだから。そこにこそ、創造のよろこびとコツコツ労作をいとわないはげましとがある。