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ぶんがくのながれ

文学の流れ

宮本 百合子

「三田新聞」1938(昭和13)年6月10日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,725 字 · 6 页

青空文庫

をもって洞察し評価し取捨して現実を再現しなければならないかということになると、ついそれが身の処置と混同して理解されたりア・ラ・モード風の方便地獄に片脚いれられたりしがちである。思想的潮流のあらゆる時代を潜って、文学はこの点執拗な粘着力で、人間が生きている人間の姿を書くことを求めつづけて来ているのである。

昔の外国のロマンチシズムの時代を顧みるとなかなか興味のあることは、抽象名詞が雄飛した割合に、作品で後にのこるものがないことである。明日の日本の文学が雄大なものであるためには、今日の生活の現実に徹しなければならず赫々たるものに対してはまことに微々たる如きめいめいの生活の姿に、猶当とは観なかった意義と社会性格の集積を発見してゆくだけの自信と覚悟と勤勉とがなければならないと思う。技術上日本文学がもっとわがものとしなければならない構成力について見ても、根本は、現実把握の力の問題にかかっている。更にこれをさかのぼれば、生活に肉薄した作家の常に正気を失わぬ眼力、人間の幸福に向っての骨惜しみをしない努力とそのための価値の探求・発見の態度にかかっている。あるままを素直に感受する敏感さと、驚きもよろこびも疑問をも活々と感じ得る慧智と、人間の文化の今日までの成果に立っての強靭なる判断力、推理力が、益々作家に必要な稟質となっ