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ぶんげいのてつがくてききそ
文芸の哲学的基礎
文艺创作有没有哲学根基?夏目漱石从自身经验出发,探讨文艺的本质和意义,引人深思。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,519 字 · 98 页
いわゆる懦夫をして起たしむとはこの時の事であります。英語ではこれを heroism と名づけます。吾人の heroism に対して起す情緒は実際偉大なものに相違ありません。私は今日ここへ参りがけに砲兵工厰の高い煙突から黒煙がむやみにむくむく立ち騰るのを見て一種の感を得ました。考えると煤煙などは俗なものであります。世の中に何が汚ないと云って石炭たきほどきたないものは滅多にない。そうして、あの黒いものはみんな金がとりたいとりたいと云って煙突が吐く呼吸だと思うとなおいやです。その上あの煙は肺病によくない。――しかし私はそんな事は忘れて一種の感を得た。その感じは取も直さず、意志の発現に対して起る感じの一部分であります。砲兵工厰の煙ですらこうだから真正の heroism に至っては実に壮烈な感じがあるだろうと思います。文芸家のうちではこの種の情緒を理想とするものは現代においてはほとんどないように思います。この理想にも分化があるのは無論です。楠公が湊川で、願くは七たび人間に生れて朝敵を亡ぼさんと云いながら刺しちがえて死んだのは一例であります。跛で結伽のできなかった大燈国師が臨終に、今日こそ、わが言う通りになれと満足でない足をみしりと折って鮮血が法衣を染めるにも頓着なく座禅のまま往生したのも一例であります。