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ぶんげいじひょう
文芸時評
宮本 百合子
「東京朝日新聞」1932(昭和7)年1月28~31日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,930 字 · 16 页
ような霊的交流をもって生活したが、やがて男はそのみこのような霊力の女をすてて、別の女と結婚し、死ぬ。
龍江は、だが、男の結婚したことは知らず、ある夜、ふろの中で突然はげしい香におそわれ、真裸でこのような強い香をかぐのは、たいへん恥しいことだと思ううちに目がくらんで気が遠くなる。それが丁度男が花嫁の床に香水をまいた時だった。
棄てられた女は、さんざん苦しんだあげく、だんだん霊の不滅、輪廻転生の教えを美しいものと信じるようになり、霊交術にまで熱中しだす。そして、ギリシア神話のように、死んだ男は早ざきのつぼみを持つ紅梅に生れかわっているという幻をえがき、「心を一つにこらして」魂をその死人のもとにかよわせ、るる霊の不思議とあの世の生について語る。
川端康成は、一年前、「水晶幻想」を書いた時分の都会風な、ヨーロッパ的モザイックの手法とはまるで違った綿々として「香の立ちのぼる」ような筆致でこの霊界物語を書いている。龍江という女のことばをかりて、力をこめ「人間は何千年もかかって人間と自然界の万物といろいろな意味で区別しようとする方へばかり盲滅法に歩いて来た」から、そのひとりよがりが「魂をこんなにさびしくした」