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りょうりしばい
料理芝居
北大路 魯山人
「独歩」1953(昭和28)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,992 字 · 4 页
しかるに料理屋の料理を一般にいけないというのは、この芝居が多くの場合デモ芝居だからである。この芝居を演ずる料理人が大根役者であって、名優でないからである。今日、何々フランス料理、茶料理、懐石などを看板にして誇張するものは、現実に非難されもするが喜ばれているものもある。
料理屋の料理が家庭料理であってはいけないといったが、それは客が承知しないからだ。これはあたかも実際生活における行為と、芝居において演ずる所作とが同じであってはならないのとまったく軌を一にする。
試みに、夫婦喧嘩の芝居を舞台にかける場合を考えてみるとよい。もしある役者が、実際の人生に行われる掴み合いの夫婦喧嘩を見ていて、それを、その通り舞台上で演じたとするならば、怒号している言葉が、かえって冗談でもいっているように聞こえてきて、悲劇である場面が滑稽に見えるであろう。そこで舞台上においては、真実よりもある場合には誇張も必要であり、また省略することも必要となる。舞台の上を走るのに、われわれが実際に地上を走ると同じようにランニングを行ったのでは、走る感じが出ない。
それと同じ心で、料理屋の料理は、家庭料理を美化し、定型化して、舞台にかけるところの、料理における芝居なのである。