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だんそうがん

断層顔

海野 十三

「探偵よみもの」1947(昭和22)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,033 字 · 33 页

青空文庫

「でも、それではおじさまの判定は甘すぎますよ。これはすごい大事件です」

「そうかもしれないが、とにかくあの婦人の立場においては、あれだけのことさ」

「僕は同意が出来ませんね。おじさま。あの婦人が恐怖しているその男はどんな顔の男か。それを訊かなかったじゃないですか。こいつは頗る大切な事項なのに……」

「そんなことは訊くまでもないさ。これから行って、あのひとにまといついているその男の顔を実際にわれわれの目が見るのが一番明瞭で、いいじゃないか」

「呑気だなあ」

「ムサシ君。事件依頼者からは、なるべくものを訊かないようにするのがいいのだよ。こっちの手で分ることなら、それは訊かないに越したことはない」

「そうですかねえ」

甥の蜂葉十六は不満の面持だ。

「君も一緒に行ってくれるだろう。私はあと五分で出掛ける。もちろんあの恐ろしい顔の男を見るためにだ」

「僕はもちろんお供しますよ、おじさま」

甥は急に笑顔になった。

水銀地階区三九九――が谷間シズカと碇曳治との愛の巣の所在だった。

老探偵は甥と肩を並べて、その近くまでを動く道路に乗って行き、空蝉広場から先を、歩道にそってゆっくり歩いていった。