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だんそうがん

断層顔

海野 十三

「探偵よみもの」1947(昭和22)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,033 字 · 33 页

青空文庫

このあたりは五年ほど前に開発された住宅区であったが、重宝な設計のなされているのに拘らず、わりあいに入っている人がすくなかった。それは場所が、最も都心より離れていて、不便な感じのするためであったろう。しかし時間の上からいえば、高速度管道を使えば、都心まで十五分しかかからないのであったが……。みんな性かちになっているんだ。

探偵は、ゆるやかな坂道をあがっていった。この坂の上が三九九の一角で、そこにアパートがあるはずだった。最近のアパートは目に立たぬ入口が十も二十もあって、人々は自分の好む通路を選んで入ることが出来る。――それだけに探偵商売には厄介だった。

「来たね。ふうん。これはあのあたりから入りこむのがいいらしい」

老探偵の直感は、多年みがきをかけられたものだけに凄いほどだった。甥は、いざとなれば、すぐ伯父の前へとび出して、相手を撃ち倒すだけの心がまえをして、しずかについて行く。

地中に眼鏡橋が曲ってついている――ような通路がついて、奥の方へ曲って入りこんでいる。が、天井にはガス放電灯が青白い光を放って、視力の衰えた者にも十分な照明をあたえている。