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だんそうがん

断層顔

海野 十三

「探偵よみもの」1947(昭和22)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,033 字 · 33 页

青空文庫

帆村は甥と共に、そこを引揚げて彼の事務所へ戻った。

若い甥は、帆村をそっちのけに昂奮していた。帆村はそれをしきりになだめながら順々に仕事をつづけていった。

「こうなれば、谷間シズカ夫人の事件なんか後まわしにするんですね」

蜂葉は、そうするように伯父へ薦めたい一心から、そんな事をくりかえし口走った。

帆村は何とも応えなかった。

いつの間か、夜は更けた。

「おい、出掛けるよ。ついて来るかい」

「行きますとも。ですが、一体どこへ?」

帆村の目あては、例のだらだら坂だった。厳冬であるが、ここは地下街のことだから、気温は二十度に保たれている。

帆村は確信に燃えているらしく、その坂をさっさと昇っていった。

坂を昇り切ろうとしたとき、帆村は甥に合図をした。

二人は突然足を停めると、左へ向きをかえた。蜂葉が、あたり五メートル四方が満月の下ほどの明るさになる照明灯を点じた。帆村の姿も蜂葉の姿も、光の中にむきだしであった。蜂葉の手に光っているピストルまでが……。

「静かに、静かに。あなたが逃げなければ、ピストルは撃ちません」

老探偵は、圧しつけるような調子で、自分に向い合っている醜怪なる顔の男に呼びかけた。