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だんがい

断崖

江戸川 乱歩

「報知新聞」報知新聞社、1950(昭和25)年3月1日~12日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,102 字 · 27 页

青空文庫

そのお芝居で、君に第一ヒントをあたえたんだね。それで、次の第二ヒントは?」

女「紺色のオーバーの男」

男「同じ紺色のソフトをかむって、黒めがねをかけて、濃い口ひげをはやした」

女「その男を、あなたが最初にめっけたのね」

男「うん、なにしろ僕は君のうちの居候で、君達夫婦のお抱え道化師で、それから第三に売れない絵かきだったんだからね。ひまがあるから町をぶらつくことも多い。紺オーバーの男が君のうちのまわりをウロウロしているのを、第一に気づいたのも僕だし、角の喫茶店で、その紺オーバーが、君のうちの家族のことや間取りなんかまで、根ほり葉ほりたずねていたということを、喫茶店のマダムから聞き出して、君に教えてやったのも僕だからね」

女「あたしもその男に出会った。勝手口のくぐり門の外で一度、表門のわきで二度。紺のダブダブのオーバーのポケットに両手を突込んで、影のように立っていた。なにかまがまがしい影のように突立っていた」

男「最初はどろぼうかもしれないと思ったんだね。近所の女中さんなんかも、そいつの姿を見かけて、注意してくれた」

女「ところが、それはどろぼうよりも、もっと恐ろしいものだったわね。