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だんぺん(に)
断片(Ⅱ)
寺田 寅彦
「明星」1927(昭和2)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,380 字 · 5 页
一
連句で附句をする妙趣は自己を捨てて自己を活かし他を活かす事にあると思う。前句の世界へすっかり身を沈めてその底から何物かを握んで浮上がって来るとそこに自分自身の世界が開けている。
前句の表面に現われただけのものから得た聯想に執着してはいい附句は出来ない。
前句がそれ自身には平凡でも附句がいいと前句がぐっと活きて引立って来る。どんな平凡な句でもその奥底には色々ないいものの可能性が含まれている。それを握んで明るみへ引出して展開させるとそこからまた次に来る世界の胚子が生れる。
それをするにはやはり前句に対する同情がなければ出来ない。どんな句にでも、云い換えるとどんな「人間」にでも同情し得るだけの心の広さがなくてはいい俳諧は出来ない。
二
九月二十四日の暴風雨に庭の桜の樹が一本折れた。今年の春、勝手口にあった藤を移植して桜にからませた、その葉が大変に茂っていたので、これに当たる風の力が過大になって、細い樹幹の弾力では持ち切れなくなったものと思われる。
これで見ても樹木などの枝葉の量と樹幹の大きさとが、いかによく釣合が取れて、無駄がなく出来ているかが分る。