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あたらしいぶんがくのたんじょう
新しい文学の誕生
宮本 百合子
若い人に贈る
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,325 字 · 13 页
衣、食、住、愛憎の主題に戻って、今日の出版物の多くを眺めると、戦争が社会の安定を破壊し、個々の人の物質と精神のよりどころを粉砕した、その乱脈ぶりと、傷口とが、まざまざ反映している。既成の文学のなかで、愛憎の問題は、人間の発展のモメントとして、まともに扱われる基礎を失ってしまった。こういうテーマに熱中していたのは中産階級の作家であり、文学であり、またその読者であったのだが、今日、日本の中産階級というものの実態はどうだろう。経済的に破滅した。経済上、精神上の闇が洪水のように、最もよわいこの社会層をつきくずしている。戦争中、非人間的な抑圧に呻いていた気分の反動で、すべての人間としての欲望をのばしたい衝動がある。その半面、経済的な社会生活の現実では、その激しい衝動を順調にみたしてゆく可能が奪われているから、虚無的な刹那的な官能のなかに、生存を確認する、というようなデカダンス文学が生れた。封建的な人間抑圧への反抗ということも、理由とされているが、それは、その第一歩、第一作の書かれた動機のかげにあった一つのぼんやりしたバネであったにすぎない。二作、三作、ましてそれで儲かって書きつづけてゆく作品のモティーヴになってはいない。