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あたらしいまち

新しい町

小川 未明

「童話」1925(大正14)年11月号

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 5,465 字 · 11 页

青空文庫

幸三のもらっている給金だけでは、思うように手当てもできなかったのです。彼は、それを考えると、悲しくなりました。

「自分は、どんなに、つらい働きをしてもいいから、どうかして、お母さんをはやくなおしてあげたいものだ。」と思いました。

ある日の、もはや暮れ方のことであります。途すがら、少年は、暗い思いにふけって歩いてきました。

そこは、つねに、車や、人の通りのはげしいところでした。空は、雲っていて、下の水の上には、荷を積んだ、幾そうかの船が、黒い影を乱していました。そして、雑沓する道からは、喧騒な叫びがあがり、ほこりが舞いたっていました。その間を少年は、とぼとぼ歩いてきたのです。

彼は、橋の上にくるとしばらく、立ち止まって欄干によって、水の上をぼんやりとながめていました。

「思うように、親に、孝養をつくされる人はしあわせなものだ。」と、彼は思ったのでした。そして、目の中に、不しあわせな、貧しい、自分の母の姿を描いて、気の毒に思わずにはいられなかったのです。

彼は、空想からさめて、ふと橋の欄干に目を落としますと、自分から、数歩隔たったと思われるところに、あまり目につかないほどの小さな紙きれがはってありました。