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あたらしいまち

新しい町

小川 未明

「童話」1925(大正14)年11月号

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 5,465 字 · 11 页

青空文庫

」といって、社長は、コップに、ぶどう酒を注いでくれました。

それは、甘い一種の酒でしたが、不思議に気持ちのよくなるのを感じました。

「またくるがいい。今日は、これでお帰り。雨が降っているようだから、この子供に、家まで送らせよう……。」と、年老った、社長はいいました。

幸三は、暮れ方の曇っていた空が、いつのまにか雨となったのに気づきませんでした。少年の労働者と二人連れだって、彼は、地下室から外へ出ると、そこに、一台の自動車が待っていました。

「これは、会社の自動車なんだ。社長がいったのだから、さあ乗りたまえ。」と、少年はいいました。

幸三は、かつて、こんな自動車に乗ったことはありません。しかし、こういわれると辞退しきれずに乗りました。自分のそばには、青い労働服を着た少年が腰をかけました。

雨は、しきりに降って、窓のガラスにかかりました。自動車は、走って、いつしか明るい街の中を走っていました。青々とした街路樹に風があたって、そこにも、ここにも、緑の波を打っていました。そして、雨脚が、白い銀の線を無数に空間に引いていました。

幸三は、平常自分が歩いている街に、こんな美しい街があったことを思い出すことができませんでした。