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にいづまのしゅき
新妻の手記
豊島 与志雄
「再建評価」1949(昭和24)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,807 字 · 22 页
その時貰った三千円を、私は母へ差出した。
「まあそれは、よかったわねえ。ほんとによかったよ。これからも勉強なさい。いつ出ますか、その雑誌は。出たら二冊貰って下さいよ。一冊はあなた、一冊はわたしが頂きますから。」
母が喜んでるのは、雑誌のことだった。原稿料の方については、貯金にでもしておくんですね、と無雑作に言った。
ところが、その後、私は銀座に出たついでに、原稿料で、母へ羊羹を一折買い、吉川のために上等の絹靴下を三足買った。羊羹については、母は何とも言わず、上等の方のお茶をいれて、私と一緒に食べた。食べながら、靴下の方をたしなめた。このような靴下は上等すぎてすぐにいたむから、今後買う時は、わたしに相談なさい、といつもの調子なのである。つまり、お菓子をたべたりお茶を飲んだりするのは、友だちとの交際と同じで、私の自由だが、実用的な品物を買うのは、母の管轄だというのであろう。
そのようなこと、私にはおかしかったが、たどたどしい針仕事などをしながら、なにかしら物思いをしていると、次第に、大変なことを発見してきたのである。
結婚生活というものは、自分の家庭を持つことであり、その家庭の中で主婦としての地位に就くことである。