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しんがっきこうしんきょく

新学期行進曲

海野 十三

「家庭コント 新学期行進曲」JOAKラジオドラマ台本、1938(昭和13)年9月30日放送

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,626 字 · 20 页

青空文庫

父親 おおそうかい。道夫も此頃受験準備で、可哀想な位つかれているね。すぐ寝かしてやったとは、お前にしちゃ大出来だ。

母親 さあ、どうぞ。

父親 ああ。山盛よそってくれ。ああ腹が減った。

△音響、茶碗を盆にのせる音。つづいて飯櫃をひらく音。

父親 おや、赤貝に青柳が出ていないぜ、おい、どうしたんだ。

母親 はい。大山盛です。

△父親、飯を頬ばる。

父親 赤貝に、青柳に……。

母親 あーら、いやですわ。あれはあたしが動物学の暗誦をしていたんですわ。

父親 (飯を頬張りながら)動物学だって。

母親 ええ。つまり、斧足類の動物と申しますと、蛤だの、蜆だの、あさりだの、それから赤貝やばか貝でございますの。

父親 なあんだ。御馳走じゃなかったのかい。それは一向つまらんねえ。(気をかえて)しかし、なぜお前が赤貝やばか貝を暗記する必要があるんだ。

母親 あなたア! あ、あ、あなたア!

父親 ななな、なあんだ。急に、か、金切り声など出しやがって。

母親 失礼いたしました。ではございますが、あなたは道夫に対し、たいへん冷淡でいらっしゃいます。道夫が、あの通り受験準備のため、好きなレコードをきくことさえよしていますのに、あなたは道夫の入学試験のことを、ちっとも心配しておやりにならないんですもの。