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しんぱん ほうろうき

新版 放浪記

林 芙美子

「女人藝術」1928(昭和3)年10月号~1930(昭和5)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 247,330 字 · 497 页

青空文庫

罌粟は風に狂う

乾草の柩のなかに腹這う哀愁

頤の下に笑いを締め出して

じいと息を殺してみるのが人生

山の彼方には雲ばかり

気の毒なやせ馬の雲に乗って

幸福なんか来ると思うのがまちがい

地獄におちよ生きながら

地獄におちて這いまわる

罌粟の範囲で散りかかる

強迫善意のごうもん台

運命のなかでの交渉

刺だらけの青春

男が悪いのではない

みんな女が不器用だからだ

やたらに自由なぞあるものか

勝手にいじめぬく好奇心の勧工場

安物の手本ばかりが並んでいる

夜が更けて来るにつれて風もしずかになり、あたり一面平野の如し。童話のなかの和製ハンネレが少しも動いてこない。第一、私はハンネレのような淋しい少女はきらい。それでも和製ハンネレを書かないことには、本屋さんはみとめてくれないのだ。一枚三十銭の原稿料とはいい気なものだ。十枚書いてまず三円。十日は満足に食べられます。

えらい童話作家になろうとは思わぬ。死ぬまで詩を書いてのたれ死にするのが関の山。おかあさんごめんなさい。芙美子さんはこれきりなのよ。これきりで死んでしまうのよ。誰が悪いのでもない。なまける心はさらさらないのだけれど、どうにも一人だちの出来ぬ生れあわせです。