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しんぱん ほうろうき

新版 放浪記

林 芙美子

「女人藝術」1928(昭和3)年10月号~1930(昭和5)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 247,330 字 · 497 页

青空文庫

七輪の生木がぱちぱちと弾けて、何とも云えない優しい音だ。来年は私も二十一だ。はやく悪年よ去れ! 神様、いくらでも私をこらしめて下さい。もっとぶって、打ちのめして下さい。もっと、もっと、もっと……。私は手が寒いので、羽織の肩あげをぷりぷりと破って袖口で手を包んだ。血へどを吐いてくたばるまで神様、ぶちのめして下さい。

明日はカフエーでも探して、母を木賃宿にでも連れて行こうと思う。あったかいシュウマイを風呂敷に包んで母の下腹に抱かせる。しんしんと寒いので、私は木切れを探しては燃やす。涙の出るほどけぶい時もある。駅の待合所にいるつもりになれば何でもないのだ。寝ているひとは死人のように動かない。全身で起きていて、あのひとも辛いのに違いないと思う。辛いからなおさら動けないのだ。

(十二月×日)

夕焼のような赤い夜明け。炭がないので、私は下の鯉屋の庭さきから、木切れを盗んで来る。七輪にやかんをかけて湯をわかす。机のそばのネーブルを一つ取って来て、母へミカン汁をしぼってそれに熱い湯をさして飲ませる。

さて、私もいよいよ昇天しなければならぬ。駅の近くの荒物屋へ行って、米を一升買う。