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めいじびじんでん
新編 近代美人伝 (上)
長谷川 時雨
長谷川時雨『新編 近代美人伝 (上)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:明治美人伝、明治大正美人追憶、樋口一葉、一世お鯉、大橋須磨子、竹本綾之助、豊竹呂昇、平塚明子(らいてう)、松井須磨子、芳川鎌子。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 129,076 字 · 256 页
「面倒くそうございますから、なにもかもみんな御前に差上げます」
そして目録を書いてある遺書を、さっさとおいてお鯉は帰ってしまった。
お鯉の家の門前は急に人足が茂くなった。手をかえ品をかえ、温顔に恐面に、さまざまの人が、さまざまの策略をめぐらして訪問するのであった。慰問使、媾和使、降伏説得使なのである。鯉の頭は猶更下ろうとはしない。その多くのなかに異色ある者が二人あった。男女互に一人ずつ、共に有名な人物である。
女は当代の名物女とゆるされた故「喜楽」の女将おきんであった。男は政界の名物法螺丸と綽名をよばれた、杉山茂丸という人である。
杉山は度々仲にはいって足をはこぶうちにお鯉のいうことに耳を傾けるようになった。そしてその方が理窟のあることだと同情してしまった。つまり説得するものが説破されたのである。この人はお鯉の利益になるように説くようになった。そこで、喜楽の女将が、我こそと手ぐすねをひいて出て来たのだ。自分でなければ、ああひぞってしまった女を、説附ける腕はないと信じて現われた。
喜楽の女将の一喝にあえば、多くの芸妓は縮みあがってしまう勢いがあった。