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めいじびじんでん

新編 近代美人伝 (上)

長谷川 時雨

長谷川時雨『新編 近代美人伝 (上)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:明治美人伝、明治大正美人追憶、樋口一葉、一世お鯉、大橋須磨子、竹本綾之助、豊竹呂昇、平塚明子(らいてう)、松井須磨子、芳川鎌子。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 129,076 字 · 256 页

青空文庫

――ななつになる子が、いたいけなこと言た。とのごほしと唄とうた……

上方唄の台広の駒にかかる絃は、重くしっとりと響いた。こい毛を、まっくろな艶に、荒歯の毛すじあとをつけた、ほどのいい丸髷に結って、向うむきに坐って三味線をひいている人がある。すこしはなれたところに、色白な毛の薄い老女が、渋い着ものをきて、半分は後見役で、半分は拝見の心持ちで、坐っている。もう一人大柄な、顔もおおきい、年もかなりまさっている老女が、頭のまん中へちいさな簪巻きを(糸巻きという結びかたかも知れない)つけて、細い白葛引きをぴんと結んで、しゃんとした腰附きではあるが、帯をゆるくしめて、舞扇をもって立っている。

その傍に、小腰をかがめて媼の小舞を舞うているのは、冴々した眼の、白い顔がすこし赤らみを含んで、汗ばんだ耳もとから頬へ、頬から頸の、あるかなきかのおしろいのなまめき――しっとりとした濡れの色の鬢つき、銀杏がえしに、大島の荒い一つ着に黒繻子の片側を前に見せて、すこしも綺羅びやかには見せねど、ありふれた好みとは異っている女が、芸にうちこんだ生々しさで、立った老女の方へ眼をくばっている――