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めいじびじんでん

新編 近代美人伝 (上)

長谷川 時雨

長谷川時雨『新編 近代美人伝 (上)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:明治美人伝、明治大正美人追憶、樋口一葉、一世お鯉、大橋須磨子、竹本綾之助、豊竹呂昇、平塚明子(らいてう)、松井須磨子、芳川鎌子。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 129,076 字 · 256 页

青空文庫

と聞かれたので、

「世の義理は重んじなければならないものだと私は思います。けれども家の名も惜くないことはありません。甲乙がないといいたいけれど、どうも私の心は家の方へ引かれがちです。何故というのに、自分ばかりのことでなく、母もあれば兄妹もあるので」

と答えた。

「では言わなければならないことでありますが、貴女は半井さんと交際を断つ訳にはいかないでしょうか」

といった。

彼女は友の視線があまりまぶしいので、何事と知らねど胸の中にもののたたまるように思われた。

「妙なことを仰しゃるのね。それは何時ぞやもお咄したとおり、あの方はお齢も若いし、美しい御顔でもあるし私が行ったりするのは、憚からなけりゃなるまいと思っています。幾度交際を断とうと思ったかも知れはしません。けれど受けた恩義もあり、そうは出来かねているのよ、私というものの行いに、汚れのないのを御存知でありながら……」

と彼女は怨みもした。

「そりゃあ道理はそうですけれど――まあ訳はいずれ話しますが、どうしても交際が断てないというのならば、私でも疑うかもしれませんよ」

そういって友は立別れた。一葉は、ふとその日の訝しい友の言葉を思い出したので、歌子によってその惑いを解いてもらおうとしたのであった。