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いちかわくめはち

新編 近代美人伝 (下)

長谷川 時雨

長谷川時雨『新編 近代美人伝 (下)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:市川九女八、江木欣々女史、遠藤(岩野)清子、大塚楠緒子、九条武子、朱絃舎浜子、田沢稲船、柳原燁子(白蓮)、モルガンお雪。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 138,172 字 · 277 页

青空文庫

させたが、次の日、乳母だけがお供をしていって、帰ってくると浜子は、

「踊のおけいこ厭だから、やめてください。」

と、母親にいった。そんなに気がむかないのなら、また、そのうちに行きたくなるまで休ませようと、乳母を師匠のところへ断わりにやろうとすると、

「いいえ、好いの、もうちゃんと来ませんと断わって来ました。」

と、六歳の彼女は言ったものだった。

箏の稽古の方は、箏を父親が好かないので、内しょで弟子入りしたのだった。

師匠の大出勾当は、江戸で名の知れた常磐津の岸沢文左衛門の息子だった。開港地の横浜が日の出の勢いなので、早くから移って来ていたが、野沢屋の主人の囲い者で、栄華をきわめ贅沢をしつくしていた、お蝶さんという権妻のひっかかりだったのだが、そんな縁引きがありながら、盲目のこととて、新入門の弟子の体に触って見たらば、あんまり小さいので、

「これでは仕方がない、大きくなったらまたお出なさい。」

と断わった。

それを、傍らで見ていた大出勾当の母親は、

「なにを馬鹿なことをいうんだ。稽古というものは、教えて見て、弾けるか弾けないかで断わりもするが、小さいから大きいからっていうことはない。