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いちかわくめはち

新編 近代美人伝 (下)

長谷川 時雨

長谷川時雨『新編 近代美人伝 (下)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:市川九女八、江木欣々女史、遠藤(岩野)清子、大塚楠緒子、九条武子、朱絃舎浜子、田沢稲船、柳原燁子(白蓮)、モルガンお雪。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 138,172 字 · 277 页

青空文庫

モルガンが払う金を見ていると、夜店の駄金魚を買うのとは、お話にならないほど高い金を、お雪の一時の興味にはらっているのだった。

青い迷送香、赤い紫羅欄花、アネモネ、薔薇、そして枝も撓わなミモザ。それはお雪の手にもモルガンの小脇にも抱えこぼれ、お供の少年の、背中の籠にも盛りこぼれるほどだった。

「この花を、室中へ敷いて、お雪さん休みます。」

と、モルガンはいっているが、黄金色の花が、みんな金貨のような錯覚をお雪に与えた。ダイヤモンドばかりでなく、自分の身からも光りが発しるような気がした。四万円で購われた身だということに、今まで妙に拘わっていたのさえ変な気がした。

こんなに親切にしてくれた男はあったか――お雪は、ミモザの花に埋もれたようになって、椰子の木影のベンチに、クタクタといた。

情人はあった。楽しかった人と、悲しかった人と――けれど、モルガンのような親切な男は、ない。

はっきりと、ない、と心にいって見ると、ふと、日光が翳ったように、そうでない、みんな親切なのだったのではないかと、はじめて気がついた。

楽しかった人――それは粋なことを書いていた、筆の人だった。