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いちかわくめはち
新編 近代美人伝 (下)
長谷川 時雨
長谷川時雨『新編 近代美人伝 (下)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:市川九女八、江木欣々女史、遠藤(岩野)清子、大塚楠緒子、九条武子、朱絃舎浜子、田沢稲船、柳原燁子(白蓮)、モルガンお雪。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 138,172 字 · 277 页
彼女は、泡鳴氏に結婚を申込まれる前に、五年間もある人を思っていて、そして失恋している。プラトニックラブにやぶれた彼女は、国府津の海に入水したほど、「恋」に全霊的であり、彼女は事業も名誉も第二義的のもので、恋を生命としていたものは、それに破れれば現世に生きる意義を見出せないとまでいっている。そして、その最初の恋を、心の底にいつまでも宿していた。
彼女は、明治末期の、女性覚醒期に生れあわせて、彼女は大きな理想のもとに、それまでの女性とは異なる、生活方針を創造しようとした。我国において最初、覚醒運動を起した仲間の一人なので、彼女は彼女のゆく道を正しく歩もうと闘かったのだ。その理想主義者――泡鳴にいわせればローマン主義者の、愛の闘争は、破れたといっても決して敗北とはいわれまい。
そこへ忽然と現われたのが、半獣主義を標榜する泡鳴だったのだ。
明治四十二年十二月に、泡鳴は、突然面識もない彼女に、逢いに行って、二時間ばかりの間、率直に自分の半生の経歴を、告白的にあからさまに語りきかせた。清子はそのおりのことを日記では、泡鳴氏の素行には同感できなかったが、恬淡な性質には敬意を持つことが出来たと書いている。