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いちかわくめはち

新編 近代美人伝 (下)

長谷川 時雨

長谷川時雨『新編 近代美人伝 (下)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:市川九女八、江木欣々女史、遠藤(岩野)清子、大塚楠緒子、九条武子、朱絃舎浜子、田沢稲船、柳原燁子(白蓮)、モルガンお雪。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 138,172 字 · 277 页

青空文庫

(『九条武子夫人』より抄)

――七条駅近くの大路には、東本願寺の門がある。

性格も趣昧も教養も、まさしく反対の二点にたっているとも書かれている。九月二十五日に九条家に入り、新男爵邸に即日移り、十二月には、先発の法主夫妻のあとを追って新婚旅行に、欧洲へ渡航する。しかも新郎は、英国に留学する約束だった。黙々読書する良致氏に、仕度の相談にゆくと、

「よろしいように」

と静かに答えるだけだったという。

印度では光瑞法主一行の、随行員も多く賑わしくなった。少女時代をとりかえしたように武子さんが振舞うと、明るい笑声のうちに、いつも姿を見せないのが良致氏であったという。籌子夫人が気にすると、船室にかくれて読書しているという。一方が明るくなると、一方はだんだん寡黙になる。

船室でお茶がすんで、ボーイが小さなテーブルの上をかたづけにくると、武子さんは立上る、

「では失礼します。」

「どうぞ。」

水の如き夫妻だ。

武子さんも気にせず、良人もそれに不満足を感じるような、世俗的なのではないと、山中氏はいっていられるが、しかし、わたしははっきり言う。それはどっちかが軽蔑しているのだ。