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まさことまき
方子と末起
小栗 虫太郎
「週刊朝日読物号」朝日新聞社、1938(昭和13)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,517 字 · 24 页
だから、末起とお祖母さまははやく逃げないと……。すぐ、この手紙を読んだら車にのせて、お祖母さまと此処へ飛んでいらっしゃい。あたくしは、愛と信実にかけて、無事をいのります。末起ちゃんを、胸に暖めて、やんわり包んであげます。
はやく、末起、はやく逃げてきて……。
………………………
ついに方子の推測が真実となった。
翌日、方子は斜面に寝ころんで、貂のような、空の浮き雲をうっとりと眺めている。その、烈しい空、樹海は、緑の晃燿をあげ、燃えるような谿だ。
(末起がくる、末起を抱いて、あたらしい生活がはじまる……)
方子は、夢心地で沁み入るような幸福感に陽炎を追い、飛ぶ列車を想像していた。三人の生活――お祖母さまには、酷迫さがなくなる。末起の、心の傷もやがて癒えるだろう。そして二人の愛は、浄らかな至高なものとして続くだろう。
それに何故、女が女を愛してはいけないというのだろうか。此処でふたりの少女が、永遠の童貞を誓うのに……。
方子は、口をとがらせ、うっとりと抗議を呟いた。腹んばいの、したからは土壌の息吹きが、起伏が、末起の胸のように乳首に触れる。回春も近い。