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りょかくきじけん
旅客機事件
大庭 武年
「探偵」駿南社、1931(昭和6)年11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,209 字 · 21 页
検事の言葉を聞くと、池内は眉をあげて言った。「落下傘は屍体のすぐ傍にあったと言うのではないのですか? 一体あの時、機の速力は時速百二十哩位でした。だから、そうです、秒速にすれば一町ぐらいに当るのです。若し貴方が謂われるように、綿井氏を落して後、落下傘を第三者が投げたとすれば、如何にしても一町や二町、屍体と落下傘の距離は出来なければならない筈なのです。落下傘は確実に綿井氏が携帯して飛び降りたのである事は、後に示された現場から見て確実です」
「すると綿井氏は自殺でも他殺でもないと言う事になるではないか?」
「そうなのです。私は考えるのですが、綿井氏は自殺する心算でいた事は確実で、飛行中もその飛び降りるべく心を砕いていた、が急な精神上の転化から自殺を思い止まり、その前にゆくりなくも発見していた落下傘を利用し、一狂言演じようとして失敗したのであろうと思います」
「すると君は、秀岡氏殺害犯は綿井氏だと言うあの説なのだね」
「いや、それは一寸待って頂きたいのです」池内は時計を出してみて「もうすぐ、それは他から証明される筈になっておりますから。その報告次第に依っては、私は事件をどう取扱っていいか分らなくなるのですが、多分、期待通り解決はつく事になりはしないかと思います」