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りょかくきじけん

旅客機事件

大庭 武年

「探偵」駿南社、1931(昭和6)年11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,209 字 · 21 页

青空文庫

何故となれば二人は飛行場で初めて顔を合わせた未知同士だったのだからね。だからどうしても、綿井氏が兇器をかくし持っていたとは考えられず、一方狭い機内には何一つとして兇器に利用されるような物はなかったのだ。勿論秀岡氏は鞄以外に所持品の無かった事は誰れだって知っている。僕は結局想像を可及的に拡げてゆくより外に仕方はなかった。即ち一九二八年オランダであったと言う事件、すれ違った機から、その機の附属品が飛んで、他の機の操縦者を傷つけたと言う事件を考え浮べずにはいられなかった。そしてすぐその考えの当っているかどうかを、P民間飛行場に尋ねてみたのだ」

二人は顔を見合せて微笑んだ。

「然しね三枝」池内は続けて言った。「何が幸いだと言っても、僕に立派なアリバイがあった事だ。若し僕にアリバイが出来なかったとしたら、僕等は什麼怖ろしい結果になっていたか知れない。然しそれと言うのも所詮君がDを出る前に、あんな事を僕に頼んだからこそだった。一体、什麼心算で、阿麼事を僕に頼んだのだ?」

三枝は急に顔を赤らめて答えた。

「玲子さん(彼の許嫁)が慎三君(その兄)とその前日より自動車旅行に出ていたのだ。