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ひはかがやけり
日は輝けり
宮本 百合子
「中央公論」1917(大正6)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 76,445 字 · 152 页
八人も生れた子はありながら、その中の六人まで連れて行ってしまった死神が、今また大切な一人をねらっていると思うと、年をとり、心の弱くなった孝之進は堪らなかった。いろいろな心痛で、とかく心が打ち負かされそうになっても、彼は老妻のおらくなどには、一言も洩さなかった。人間一人二人の死は、さほど悲しむべきものと考えないように教育された若いときの記憶習慣が、孝之進の心に、何かにつけて堪え難い矛盾を感じさせた。仏壇の前に端坐して、祈念を凝している妻の姿などを、まじまじと眺めながら、彼は「女子は楽なものじゃ」と思った。女は泣くもの歎くものと昔から許されていることも、口先では侮どっているものの、衷心ではほんとに美しいこともある。涙を浮べながらでも笑わずに済まない男の意地――たといそれは孝之進が自分ぎめの考えではあったにしろ――はずいぶんと辛いものであった。娘が病気になってから、おらくは、以前よりはっきりと、地獄、極楽の夢を見るようになった。
或るときは一家睦まじく一つの蓮の上に安坐していることもあり、また或るときは、お咲だけが、蓮から辷り落ちて、這い上ろうとしながら、とうとう、下のどこか暗い方へ落ちて行ってしまったところなどを見た。