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にちげつさま

日月様

坂口 安吾

「オール読物 第四巻第七号」1949(昭和24)年7月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,162 字 · 23 页

青空文庫

文学の指導、といったって、先方の才能の見当がつかなければ、どうなるものでもなし、第一、文学の指導という結論に達するまでの話の筋が、いわば芸術的因果物というような血なまぐさい奇妙なもので、穏やかならぬものである。

この又あとに結論があって、私の妾にしろとでもいうのであろうか。不美人という程ではなし、スラリとのびた姿態にはちょっと魅力があり、押し黙り、ひねくれて、いかにも陰性な感じであっても、一晩なら遊んでもいいぐらいの助平根性はあった。酔っていたから、助平根性は容赦なく掻き立てられても、穏やかならぬ話にこもる凄味はさすがに胸にこたえた。

「文学の指導たって、芸ごとは身に具わる才能がなければ、いくら努力してみたって、ダメなものですよ。それを見た上でなくちゃア返事のできるものじゃアないね」

「然し、先生、こんなことは、ありませんか。かりにです、かりにですよ。いえ、かりじゃアないかも知れません。天才てえものが気違いだとします。天才てえものは気違いだから、ほかの人の見ることのできないものを見ているでしょう。それがあったら、これはもう、ゆるぎのない天分じゃありませんか」